近代美術の不可思議、‘キュビズム’を分析

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謎ばかり呼ぶキュビズム

美術史の中でも、命題となる技法

芸術とは総じて独創性という名の表現によって完成された創作物となっている。それは何処までも際限なく、また誰にしてもその創られた作品の本質を完全に読み解くことは出来ないものだ。専門家によれば描き手の気持ちは作品を見れば判るなどと言われることもあるが、大半は憶測に過ぎないだろう。本当にそこから作者個人の全てを知れたら、ある意味特殊能力過ぎる。ただ芸術の楽しみ方はそんな作者の意図を紐解くことを楽しみとすることも一理ある、だが素人目線ではそれを何処まで理解できるかは程度がしれている。人が持っている価値観によって芸術と呼ばれる絵も、彫刻も、全てその意味が統一されることはない。それもまた芸術の楽しみといえる。

だがしかし、芸術の中にはあまりに独創的過ぎるために素人はもちろん、専門的に勉強している人間でも特徴があまり個人的な美的センスに似ていなければ、好き嫌いは存在するものだ。その中でも特に好き嫌いというわけではなく、絵画のタッチがあまりに独特すぎるものとして挙げられるのが、近代美術の中でも代表作と呼ばれる『キュビズム』だ。キュビズムを理解出来る人はある意味天才と呼べるかもしれないが、本当の意味で理解している人は誰もいないだろう。

そもそもキュビズムを初めて見た人で、どれだけの人がこれは何という素晴らしい表現をしているんだと、感じる人がどれ程いるだろうか。芸術の本場である西欧諸国であればある程度価値観が似ているかもしれないものの、キュビズム絵画が日本に初来日した際、人々はどんな思いを持っただろうかと気になってしまう。

筆者にしてもキュビズムは作品単位としてみれば確かに前衛的だ、当時にしてみればこれほど斬新な作品はないだろうといえるものの、それを良いと思うまでにはやはり時間はかかったものだ。そんなキュビズムとは、一体何なのか。見ているだけで人生とは何だろうかと考えさせられてしまうその絵画を、ここでは作者なりの考察を交えて考えていく。

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キュビズムといわれる存在

そもそもキュビズムと呼ばれるものを端的に、かいつまんで説明するとなると要約すればこのようになる。

・ルネサンス以来に見られる『単一焦点による遠近法』の放棄
・形態上の極端な解体・単純化・抽象化

これでも分からないという人が出てくるかもしれないが、まだ簡略化されているほうなので、こういうものだと念頭に入れてもらいたい。

キュビズムと呼ばれるそれは絵画だけと想像する人もいるだろうが、実際には彫刻やデザインといった他分野にも応用されている技法で、それは多くの場面で活躍しているという。業界からすればキュビズムは業界人となる上では、決して避けては通れない登竜門といえる。使用されているとはいっても、それはあくまで専門的に仕事をしている人にだけいえること、デザインとは無縁の仕事をしている人にはそもそも関わりあいも自分で場を設けなければ生まれない。

インパクトは最高

その奇奇怪怪めいた表現力には脱帽させられる、理解しようものならおそらく高名な美術家の作品をいくつも視認して、そこから読み取れる作者の意志や作品の世界観を知るところから始めてようやく、といったところか。ただキュビズムはその独創性を究極的にともいえるように追求したセンスには、多くの人がそれまで見たことのなかった美的感覚に心奪われ、一躍当時キュビズムで活動していた画家達はその名を歴史に馳せていく。代表的なのは誰もが知っている『パブロ=ピカソ』だ。

実際ピカソにとってもキュビズムについては思い入れが非常に強く、晩年を通して彼の作品はキュビズムに傾倒していたと言われている。それだけキュビズムという近代に生まれた新しい美術としての形は芸術家にしてみれば、恐ろしく先進的だったといえる。作品に対してもそうだが、作者にしてもキュビズムの存在は非常に大きいようだ。

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立体か、立方体か

キュビズムについて話していると、人によっては言葉に難色を示す、もしくは少し違うのではないかと思う人がいるかもしれない。ここでは便宜上『キュビズム』と呼んでいる、一般的な呼称としても日本人にしてみればこちらが圧倒的に通りがいいはず。しかしキュビズムという芸術文化が誕生したフランスにおいては、『キュビスム』と呼ばれている。どうして日本ではキュビズムと呼ばれているのかだが、これはフランス語読みではなく、英語読みとなっているからだ。言葉の読み方でもこうした際を生み出しているわけだが、この語源を元にして1つのテーマが議論されている。それはキュビズムという絵画を『立体』とするべきか、それとも『立方体』とするべきか、ということだ。

この話をしていると数学的な問題になってくるため、そこまで言及しないがそれぞれを分野的に意味する、もしくは指している図形としては、

・立体
幾何学における立体、もしくは中身の詰まった図形の中でも、表面となっている曲面を記述することによって与えられる三次元の図形
・立方体
6つの合同な正方形で構成されている図形

このようになっている。一ついえるのは、総体的に見れば立方体とはいわゆる立体名称の1つとなっているため、どちらともが同じ性質を帯びているわけだ。ただ細かい部分での意味はさすがに異なっているのは専門的に見れば用意に理解できると思う、そしてそうした観点からキュビズムという言葉をどのように捉えるかが議論されているという。

初めはキュビズムを『立体派』と訳すべきだとしていたが、時代が進んだことによって立体派は適切ではなく、『立方体派』とした方が正しいという意見も出ている。

どちらを正式な意味として定めるべきかは結論が出ていないため、この点については豆知識程度に頭の片隅に入れておくだけで、今は良いだろう。