近代美術の不可思議、‘キュビズム’を分析

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建築分野ではオシャレになる

稀少技術、キュビズム建築

様々な議論をぶちかまし、当時も炎上的な話題性だけなら現代のA○B並みに知名度が高かったキュビズムだが、なんとそれがとある国で、ある分野で見事なまでの成功実例を叩き出しているという。しかもそれは二次元ではなく、実際の三次元によって見事なまでに表現されており、それは絵画の世界におけるキュビズムと同質のものとはとても思えないほどだ。筆者も実際に資料で写真を見たときには驚愕したものだ、本当にこれがあのキュビズムなのかと。

言われて見れば確かにそれとなく、技術としての特徴が感じられるデザインとなっているが、やはり同種の技法が用いられた結果によって生み出された作品とは思えないほどだ。その成功例とは何なのか、それは建築物のデザインに用いられており、それが西欧諸国の『チェコ』で広く利用されている。それは『キュビズム建築』とも呼ばれており、しかもその建築はチェコでのみ成功した数少ない、キュビズムって実は本当に凄いことを証明した国でもある。キュビズムを理解できない人は一度チェコに訪れるといいかもしれない、それほどまでに価値観が大いに変化する建築が多く創られている。

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魅力満点、こんなところに住みたい

チェコといっても、国内全域でキュビズム建築が用いられているわけではない。特に建築物が密集している地域としてはチェコはプラハにある『ヴィシュフラト地区』にて多く密集している。そこに建造されている建物を遠めで見てみると、何処にでもありそうな建築様式に見られるが、近くによってその外壁を見てみるとキュビズムを用いているデザイン性を感じ取れるのだ。どのようになっているのかというと、遠くからではたシンプルで機能的な現代建築のように見られるそれは、距離を縮めてみるとそこにはギザギザの棚に、角ばったパターンが連続している壁で構成されているのだ。それだけでも通常の建築様式から大きく逸脱しており、中々見られない前衛的な建物がこの地区において多く連なっている。

建物といっても一軒家はもちろんのことだが、キュビズム建築が用いられている建造物はなんと集合住宅にも用いられているという。街中に建てられているそれは、日本で言うところの一昔前に建造されたマンションと比べても分かるとおり、あまりに異なっている。日本的に言えば『デザイナーズマンション』と呼称してもいいほどに、それらの集合住宅もまた、先に紹介した壁面の特徴などが一致しているため、それなりの大きさとなっている建造物としてみればかなり異質な存在感だ。

殺風景を立体にするだけで全く違う存在感

白い壁面となるとシンプルといえば聞こえはいいが、長い目で見れば殺風景過ぎると感じられてしまう。そんな壁面も立体にすることによって驚くほど印象が変化する。具体的な立体として想像しやすいのが、宝石を連想できるプリズム型のモチーフと考えれば実際に見た事がなくても映像として捉えることが出来るはず。これだけで建築として今までに見たこともない建築物が誕生するのだから、大層驚きだ。絵画の世界で罵られてばかりのキュビズムが同じ創造物の類に分けられる建築へと応用されて成功を果たす、始祖たちにしてみればこれほど嬉しいことはないだろう。

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キュビズムへの印象が180度変化する街

プラハはヴィシュフラト地区、この街の建築に用いられているキュビズム建築はあらゆる建物に用いられている、外側はもちろん、内装にもその技術が応用されており、日本ではまず考えられないような世界なのは間違いない。日本の建築家見習いとしては、この街に訪れるとあまりにセンセーショナルな外観となっている街並みに圧倒されるのはほぼ確実、一般の観光客として訪れるだけでも十分街を歩いているだけで楽しめるはず。

ただこれらキュビズム建築は現代においては使用されていない建築技術となっており、その歴史もキュビズムが誕生した20世紀初頭において、ほんの10年程度しかその歴史がない。そのため建築を学んでいる人でもほとんど聞いたことがない技術体系となっているだろう。用いられなくなった理由を探るには、やはり外壁などを制作する上で作業が困難を極める、といったところが大きいのではないか。今では建築物も簡略化されて、効率重視になっている。それをキュビズム建築のような幾何学を用いた建造物を建築するとなったら、採算を取るのが中々難しいだろう。

チェコでも新規に建造されることはなくなっているが、今でも街では当然のように使用されているため文化財とした見方であれば、十分刺激になる街並みは観光地として最高だ。その歴史の始まりと終わりが多くの人々に知られること無く衰退しながらも、建築分野において希少価値が高く、そしてキュビズムを応用して作られた名画にも劣らない作品が立ち並んでいるチェコ、建築家ならば必ず一度は訪れておきたい国なのは間違いない。キュビズムに対して批判的な人でも、この美しすぎる街を見ればキュビズムも悪いものではないというのを理解してもらえるはずだ。